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コラム

オーダースーツのポケットデザインとその機能

スーツは「男の戦闘服」と称されることもあるが、その洗練されたシルエットや生地の質感、そしてフィット感ばかりが注目されがちである。しかし、細部にこそ美学が宿るのがオーダースーツの醍醐味。中でも「ポケット」は、単なる収納部ではなく、機能性とデザイン性、さらには着る人のセンスやライフスタイルまでもを映し出す重要なディテールである。本稿では、オーダースーツのポケットデザインの種類や役割、選び方のポイントを、機能性と美的観点の双方から掘り下げていきたい。

Contents

スーツポケットの基本構造と配置

東京では、人と違うことに価値が生まれやすく、自己表現のツールとしてのファッションが重要視されます。既製品の量販スーツでは、周囲と似たり寄ったりになってしまいがちですが、オーダースーツなら一歩抜きん出た印象を自然に演出できます。また、都市部では以下のような場面で“ちゃんとしたスーツ”が求められます。

ジャケットの主なポケット

ジャケットの腰ポケットは、一般的にフラップ(ふた)付きで、外部からの埃や雨の侵入を防ぐ実用性を備えています。スーツの基本形ともいえるスタイルです。一方で、カジュアルな印象やスタイリッシュさを演出したいときには、斜めに切られた「スラントポケット」や、外付けタイプの「パッチポケット」を選ぶことができます。

胸ポケットは、実際に使われることは少ないものの、ポケットチーフを挿すことでVゾーンを彩る装飾的な要素として機能します。

腰ポケットの種類と機能性

フラップポケット(蓋付きポケット)

フラップポケットは、もっともクラシックでフォーマルな腰ポケットの代表格です。イギリス仕立ての伝統に基づくデザインで、ビジネススーツにおける基本形といえます。ポケット口にフラップ(蓋)がついており、埃や雨の侵入を防ぐ実用的な役割も兼ねています。さらに、このフラップをポケットの内側に収納することで、よりドレッシーで洗練された印象を与えることができるのも特徴の一つです。

スラントポケット(斜めポケット)

スラントポケットは、ポケット口が斜めにカットされているデザインが特徴です。もともとは乗馬用ジャケットに由来しており、手の出し入れがしやすく、腰回りに動きと流れを生む視覚効果もあります。スーツ全体をシャープに見せ、スポーティで洗練された印象を与えることができます。また、斜めのラインが脚を長く見せる効果もあるため、スタイルアップを狙いたい方にも非常におすすめのポケットです。

パッチポケット(貼り付け型ポケット)

パッチポケットは、ジャケットの表地に直接ポケットを縫い付けたスタイルで、腰ポケットの中でもカジュアルな印象を強く与えるデザインです。アウトドアウェアやサマースーツなどにも多く見られ、ジャケパンスタイルにもよく合います。縫い付けタイプのため構造がシンプルで、収納力に優れているのも魅力の一つです。ただし、ビジネスやフォーマルな場面ではラフに見えやすいため、TPOを選んで着用することが大切です。

胸ポケットの特徴と印象

バルカポケット(舟形ポケット)

バルカポケットは、胸ポケットの口がゆるやかなカーブを描いたデザインで、イタリアンスタイルに多く見られます。船のような形状をしていることから「バルカ(舟)」と呼ばれ、柔らかく優雅な印象を演出します。全体に軽やかさや華やかさを加える効果があり、ファッション性を重視する方におすすめです。クラシックな中にも遊び心や洒落感を取り入れたい方には、最適な胸ポケットのスタイルといえるでしょう。

ストレートポケット

ストレートポケットは、ポケット口がまっすぐにカットされた、もっとも標準的でベーシックな胸ポケットです。余計な装飾がなく、端正でスッキリとした印象を与えるため、ビジネスシーンやフォーマルな場面に最適です。あらゆるスーツスタイルになじみやすく、汎用性が高いのも特徴です。主張しすぎず、全体のバランスを整える役割を果たすため、初めてオーダーする方にも安心して選んでいただけるデザインです。フォーマルで端正な印象を持ち、ビジネスシーンにぴったりです。どんなスタイルにもなじむため、汎用性が高いポケットといえます。

内ポケットの実用性と自由度

せっかく仕立てたオーダースーツは、手入れ次第でその美しさと着心地を5年以上キープすることができます。以下の4つの基本的なメンテナンスを押さえることで、見た目も機能性も長く保てます。

パンツポケットの種類と設計

サイドポケット

パンツの両脇に付いているポケットで、最も使用頻度が高い部分です。斜めに切られたスラント型が多く、手の出し入れがしやすいため、日常使いに適しています。

ヒップポケット

パンツの後ろ側にあるポケットで、片方にボタン付き、もう一方はなし、といったアシンメトリーなデザインも可能です。財布などを入れる実用性を持ちつつ、ヒップラインをすっきり見せる役割もあります。オーダーパンツでは、ポケットの位置や大きさ、深さなどを細かく調整できるのが魅力です。

TPOに合わせたポケット選びのコツ

ポケットの種類やデザインを選ぶ際には、「どんな場面で着るのか」という目的を明確にすることが大切です。

ビジネスシーン

ビジネススーツでは、基本的にフラップポケットとストレート胸ポケットの組み合わせが好まれます。落ち着きと信頼感を与えるデザインであり、あらゆる職種や業種に対応できる汎用性の高さが魅力です。内ポケットには名刺や社員証、カード類などを入れるスペースを確保すると、実用性が高まり、商談や打ち合わせの場でもスムーズに対応できます。

フォーマルシーン

フォーマルな場面、たとえば結婚式や式典などでは、ジャケットのフラップを内側にしまって見せないようにし、より洗練された印象を演出します。さらに、胸元にはシルクやリネンのポケットチーフを挿すことで、華やかさと格式を添えることができます。装飾性を重視し、実用性よりも「見せ方」に重点を置くのが特徴です。

カジュアルシーン

休日やオフタイムの着こなし、あるいはジャケパンスタイルなどのカジュアルシーンでは、パッチポケットやスラントポケットを採用することで、リラックス感のある自然体の装いになります。見た目に程よい抜け感が生まれ、親しみやすさや柔らかさを演出するのに適しています。遊び心のある素材や色使いとも相性が良く、自由なスタイリングが楽しめます。

まとめ

最後に、ポケットの役割についてあらためて考えてみたいと思います。本来、ポケットは物を収納するための機能ですが、オーダースーツにおいては、むしろ「魅せる」要素としての役割が大きくなります。たとえば、バルカポケットの美しいカーブは、それだけでエレガンスを表現してくれますし、内ポケットも、名刺を取り出す所作を美しく見せるための「演出空間」となるのです。

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