
オーダースーツを手にした瞬間、多くの人がその「仕立ての良さ」や「上質な素材感」に満足します。しかし、実際にそれを着こなす上で重要なのは、スーツそのものだけではありません。スーツと合わせる“シャツの選び方”こそが、装い全体の印象を左右する大切な要素です。
とくに高級オーダースーツは、着る人の個性や価値観を映し出すツールでもあります。その魅力を最大限に引き出すためには、シャツとの相性にしっかりとこだわる必要があります。本稿では、スーツとシャツの色・柄・素材・襟型・季節・TPOごとの組み合わせ方を軸に、オーダースーツにおける基本かつ奥深い“コーディネートの極意”を紐解いていきます。
スーツとシャツは“対話する存在”
スーツとシャツの関係は、まるで会話をしているかのようなものです。一方が主張しすぎればバランスを崩し、どちらも控えめすぎれば印象に残らない。両者が自然に調和しながらも、それぞれの個性を引き立て合うことが、美しいスタイリングの鍵です。
たとえば、ネイビーのウールスーツには白のブロードシャツを合わせることで清潔感と信頼感が演出され、グレーのスーツにサックスブルーのシャツを加えると、柔らかく洗練された印象に仕上がります。基本は「引き算」。主役はあくまでスーツであり、シャツはそれを支える“名脇役”であることを意識しましょう。

色の相性で印象は決まる
王道は「白」と「サックスブルー」
ビジネスにおける王道カラーは、やはり白とサックスブルーです。白はどんなスーツにもマッチし、誠実で清潔な印象を与えてくれます。サックスブルーは少し柔らかさを加えるため、相手に安心感や親近感を与える効果があります。
ネイビースーツ×白シャツはもっともフォーマルかつ万能な組み合わせで、初対面や大事なプレゼンに最適。グレースーツ×サックスシャツは穏やかな知性を印象づけたいときにぴったりです。

色で個性を演出する
慣れてきたら、ピンクやラベンダー、アイスグレー、ベージュといったニュアンスカラーにも挑戦してみましょう。淡い色であればビジネスの場でも浮かず、洒落た雰囲気を出すことができます。特に春夏は、軽やかなトーンのシャツが季節感を演出するうえでも有効です。
色選びのコツは、「スーツとコントラストをつける」もしくは「トーンを合わせる」こと。たとえば、濃紺のスーツには淡色シャツを、ライトグレーのスーツには同系色のくすみブルーなど、明暗や彩度のバランスを取ることで洗練された印象に。
柄の合わせ方で印象操作
無地シャツで素材感を引き立てる
無地のシャツは、どんなスーツにも合う万能選手。特に、光沢感のあるスーツや繊細な生地のスーツには、プレーンな無地シャツが相性抜群です。スーツの質感やシルエットを引き立てるため、あえて主張しすぎない選択が有効となります。

ストライプ・チェックで印象を変える
ストライプはビジネスらしい清潔感とスマートな印象を与えてくれます。ピンストライプやヘアラインのような細いラインはフォーマルに、ワイドピッチはややカジュアルに。チェック柄は個性を演出したいときに活躍しますが、大柄よりもマイクロチェックやウィンドウペンなど落ち着いたデザインが、オーダースーツとの相性が良好です。
ポイントは、スーツにも柄が入っている場合、「柄×柄」の組み合わせはサイズ感を変えること。小さな柄に大きな柄を重ねることで、ぶつかり合わずバランスが取れます。
襟型とVゾーンの設計
シャツの襟は、顔の印象を左右する最重要ディテールのひとつです。たとえば、ワイドスプレッドやホリゾンタルはVゾーンを広く見せ、現代的でエレガントな印象に。一方、レギュラーカラーは最もベーシックでどんな顔立ちにも合わせやすく、ネクタイをしっかりとホールドしてくれます。

ノータイが前提のコーディネートでは、ボタンダウンやバンドカラーなどカジュアル感のある襟型も人気。とくに夏場のクールビズスタイルでは、襟が寝ないような構造のシャツを選ぶと、だらしなく見えず美しい襟元を保てます。また、オーダーシャツであれば襟の高さやカーブまで調整できるため、自分の顔立ちや首の長さに合ったものを見つけやすくなります。
襟型(カラー)で印象を操作する
- レギュラーカラー
もっとも基本的な形で、ビジネスから冠婚葬祭まで万能に対応。控えめながらもきちんと感を出せるため、初めての一着にも最適。
- グレー
襟の開きが広く、タイとの相性も良いフォーマルな印象。エレガントで堂々としたVゾーンを演出できる。
- ホリゾンタル(カッタウェイ)カラー
首元が大きく開いたスタイリッシュな襟型。ノータイでも形が美しく、現代的なスーツや細身シルエットとの相性が抜群。
- ボタンダウンカラー
襟先をボタンで留めることで形崩れを防ぎ、カジュアルな印象に。クールビズや休日スタイルにおすすめ。
- スタンドカラー(バンドカラー)
襟の台のみで構成され、ネクタイをしないスタイル向け。シンプルながら個性が出せるため、オフスタイルやジャケパンと好相性。
季節と素材感のバランス
春夏は通気性と吸水性に優れたシャツ素材が求められます。ポプリン、リネン、シアサッカー、クールマックスなど、涼感と軽やかさを持つ素材が最適。見た目にも爽やかさを与え、着心地も快適です。
秋冬はツイルやオックスフォードなど厚みのあるシャツがフィットします。ウール混や起毛素材のスーツとの相性も良く、温かみのあるコーディネートが完成します。季節に応じた素材選びは、見た目の印象だけでなく、快適さと実用性の面でも重要な要素です。

TPOに合わせた最適な組み合わせ
ビジネスシーン

ビジネスでは、信頼感と清潔感を重視した組み合わせがベスト。ネイビーやチャコールグレーのスーツに白やサックスのシャツが定番です。重要な商談や会議には、襟がしっかり立つブロード素材のワイドカラーやレギュラーカラーを選びましょう。
ネクタイをするなら、無地×小紋、ストライプ×無地など、バランスの取れた組み合わせに。全体のトーンを意識して、「目立ちすぎないが印象に残る」スタイリングが理想です。
セミフォーマル・パーティー
やや華やかな場では、パールピンクやライトパープルのシャツ、または微細な柄を使ったシャツでエレガントな雰囲気を演出するのもおすすめ。襟元はワイドカラーで広めに開き、タイにはシルクやジャカード素材を選ぶと格調が上がります。
カジュアル・クールビズ
ジャケパンスタイルやノータイが主流のシーンでは、ボタンダウンやオープンカラー、リネン混のシャツなどで抜け感を演出。スーツのシルエットや素材に合わせて襟型や生地感を変えると、自然で品のあるコーディネートになります。
まとめ
どれほど上質なオーダースーツであっても、シャツとの相性を見誤ればその魅力は半減してしまいます。色の選び方、柄の合わせ方、襟の形、素材の質感――すべてが“調和”と“美意識”のうえに成り立っています。
シャツは単なる脇役ではなく、スーツと並んで装いを完成させる大切な存在です。オーダースーツをより深く楽しむために、ぜひシャツ選びにもこだわりを持ってみてください。見た目の印象だけでなく、自分自身の気分や自信にも大きく影響を与えてくれることでしょう。
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